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ミューラル(壁画)を様々な視点から紹介するメディア

【クライアントさんに聞いてみた#05】花咲くきっかけを届ける壁。「HANASAKA MURAL(ハナサカミューラル)」3年間の歩みを振り返って


2023年2月に開催したJun Inoueさんのワークショップ

長居公園の北西エントランスにあるヨドコウ桜スタジアムの壁面。2025年4月に9つ目となる作品が完成しました。ヤンマーホールディングス株式会社とWALL SHAREが進める「HANASAKA MURAL(ハナサカミューラル)」も今年で4年目を迎えました。


「アートをもっと楽しもう!」が、プロジェクトのキャッチコピー。年に3回ずつ定期的に描き変わる壁面は、これまで9名の国内外のアーティストが描き、訪れる人々に新しい風景と出会いを届けています。今回、これまでプロジェクトを共に育ててきた、ヤンマーホールディングス株式会社 マーケティング部 コーポレートブランド室の稲積洸人さんにお話を伺い、3年目を機にその軌跡を振り返ります。


ハナサカミューラルに描かれるアートは、ただの装飾ではない。

ー改めて、「HANASAKA MURAL(ハナサカミューラル)」はどのように始まったのですか?


稲積洸人さん(以下、稲積さん):   スタジアムの機器を隠すためにあった無機質な大壁をうまく活用できないか、ということがきっかけですね。その当時の上司がアメリカで暮らしていた経験があり、現地でグラフィティやミューラルに触れていたことから、日本でももっと身近にアートを感じられる場をつくりたいという思いが出発点でした。ミューラルの協業ができる企業を探しているところ、WALL SHAREをネット検索で知り、コンタクトしたという流れですね。それが2022年です。



稲積洸人さん。Key detailの作品の前で。
稲積洸人さん。Key detailの作品の前で。

ヤンマーでは、これまでも未来を担うスポーツ選手のサポートに力を入れてきました。彼らは人々に勇気や感動を与える存在であり、それと同じようにアーティストもまた人々に感動を与える存在です。スポーツもアートも、人の心を動かし、未来への一歩を踏み出す原動力になります。そんな想いから、私たちはアートという領域にも本格的に踏み出すことを決意しました。


ここから羽ばたいた作品たちが、やがて世界中で花を咲かせてほしい。このプロジェクトは、アーティストが輝く舞台であり、未来へとつながるスタート地点です。花が咲くように、アーティストの才能がここから開き、広がっていくように──そんな願いを込めて、「HANASAKA MURAL」という名前をつけました。

2022年〜2025年4月まで完成した全作品
2022年〜2025年4月まで完成した全作品!

ースタートしてから、3年間で9作品が完成しましたね。プロジェクトの初期から見てこられている稲積さんですが、心に残っている作品や出来事はありますか?


稲積さん:   いいことも悪いことも、たくさんあります(笑)。2023年のKACさんの作品は、特別な思いがありますね。初めて私自身がアートコンテスト形式で担当した作品なんです。30名ほどの応募者の中から、社員やWALL SHAREのメンバーと一緒にスケッチを見比べて選びましたね。KACさんの作品は力強く、背景に込められたストーリー性が際立っていました。実はそのスケッチを最初に見たとき、この作品は人の心を動かすと直感で感じたことを覚えています。



これは当時の担当者が体験したことですが、2023年2月にJun Inoueさんのワークショップがあったんですよ。子どもたちが自分で絵を描いて、その絵からインスピレーションを受けて、最終的に作品に仕上げるという流れでした。寒い時期だったので、子どもたちの手が悴んでしまって……、その分すごく一生懸命に描いていて、あの姿がすごく印象に残っていると話していました。



他にもアーティストさんとの交流という意味では、simoさんでしょうか。彼とは出身地が同じで年も近く、制作中には一緒にハンバーガーを食べたりと、気さくに交流できました。


ー苦労したこと、試行錯誤したことはなかったですか?


稲積さん:   スポーツスタジアムという場所柄、作品のテーマや色使いが、時にファンや観客の感情に影響する場面もありました。一度誤解を招いてしまったこともあり、私たちもファンの方に直接話をしに行ったんです。でも対話を重ねるうちに理解者になってくださって、最初よりもよりその壁のファンにもなってくださいました。アートが誤解を生むこともあれば、それがきっかけで深い関係が築かれることもあると実感しました。


それに加えて、社内外の調整も簡単ではありませんでした。関係者の中でも「TPOにどう配慮するべきか」という議論もあり、特にスタジアムの壁という公共性の高い場所では、自己表現と公共性のバランスに悩まされたこともありました。


私たちとしては、なるべくアーティストの自由な表現を尊重したい、という思いを持って動いていたので、その都度、対話と議論を重ねることで、プロジェクトとしての芯を少しずつ太くしてきた実感があります。


Yessiowが描く「女だけ(Onna-dake)」
Yessiowが描く「女だけ(Onna-dake)」

2023年2月に開催したJun Inoueさんのワークショップの様子


2023年2月に開催したJun Inoueさんのワークショップの様子


“白塗り”作業で、バトンを渡していく


ー3年間のプロジェクト全体を通して、やってみたことでの気づきはありますか?


稲積さん:   このプロジェクトでとても大切にしているのは、「歴史をつないでいく」という感覚です。HANASAKA MURALは、ただ作品を描いて終わるのではなく、描き変えるたびに新しい命が吹き込まれていきます。その繰り返しの中に、作品にまつわるストーリーとアーティストへのリスペクトが宿っていると思っています。


稲積洸人さん

以前、アーティストのsimoさんに、グラフィティの文化は塗り重ねていくもので、それは「俺の方が上手い」という意思表示を持つアーティストが塗り替えるという話を伺ったことがあります。その境界にWALL SHAREが入って、一回フラットにしている“白塗り”作業がいいなあと僕は感じています。



そうだったんですね!ありがとうございます。


稲積さん:   はい、アーティストが描く前後に生まれてしまうつながり。新しいアーティストが描く前に、前の作品を丁寧に消して、次へとつなげる。この工程を、外部の業者に任せるのではなく、WALL SHARE自身が手作業で行っていることがいいなあと思っています。WALL SHAREが大切にしている「アーティストファースト」な姿勢が感じられる、その象徴的な場面だなと個人的に感じています。


単なる準備作業ではなく、バトンを渡すような儀式のように感じられます。その都度作品が消えてしまうのは寂しいですが、逆に描き替えることそのものが、プロジェクトの「続いている力」の象徴でもあり、それがこの場所やプロジェクトの価値を何倍にも高めていると実感しています。


Key detailの作品を見上げる稲積洸人さん

これからも、人と人、企業と地域、スポーツとアートをつないで未来を描くためのキャンバスにしていきたいです!最後に、ヤンマーさんの今後の展望を教えてください。

稲積さん:   ヤンマーは「A SUSTAINABLE FUTURE -テクノロジーで新しい豊かさへ。」というブランドステートメントを掲げています。技術だけでなく、人の感性や行動に働きかけることも未来をつくる手段のひとつだと信じています。そのために、アートの力も借りながら、これからも挑戦を続けていきたいです。


3年で9作品──それは、9つの物語とアーティストとの出会いであり、私たち自身の学びと成長の証でもあります。描き変わるたびに新たな風景が生まれる「HANASAKA MURAL」を、過去と未来をつなぐ場にしていきたいです。


「HANASAKA MURAL」参加アーティスト

Vol.6 simo(Kyosuke Shimogori) 2024年2月完成https://www.yanmar.com/jp/about/hanasaka/hanasakamural/archives_simo.html

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