【壁主さんに聞いてみた #04】アートの放つエネルギーに共感して。「此花っていいやろ?」と若者が誇れるまちになってほしい。上岡克美さん
- WALLSHARE株式会社
- 2024年12月25日
- 読了時間: 5分
更新日:3月17日

大阪市此花区で進むミューラルプロジェクト「ミューラルタウンコノハナ(MURAL TOWN KONOHANA)」。アートがまちの景観に溶け込み、人々の暮らしの一部になっていく……。
いつも応援してくれる上岡克美さんが登場!ミューラルプロジェクトに壁を提供してくださっている壁主であり、音楽とアートに深い愛情を持っておられる方です。改めて、ミューラルの魅力やまちとのつながり、そして此花のこれからについて語っていただきました。
まちとの交流、地域とのつながり
ー音楽や車がお好きですよね。音楽とアート、どちらも表現の手段として捉えているそうですね。
上岡克美さん(以下、克美さん): そうですね。僕にとって音楽もアートも、表現の方法が違うだけで、根本的には同じものなんです。音楽は音で世界を作り上げるし、壁に描くアートも空間を生み出します。2次元の世界でありながら、無限の広がりを持っている点では共通していると思います。
音楽を演奏するとき、いろんな人が集まってくるように、ミューラル(壁画)もさまざまな人の関心を引き寄せる。そこが面白いんですよ。音楽と同じように、ジャンルを問わず人を惹きつける力があるんです。

ー此花というまちでの暮らしや、人とのつながりについて教えてください。
克美さん: 74歳になりましたが、まちの人たちとの関わりはとても大切にしています。特に高齢者の方々との交流ですね。80〜90歳の方々を車で病院に送ったり、コーヒーを飲みに行ったり。此花のまちを歩いていると、「かっちゃん」と声をかけてもらえる。そんなつながりがあるまちなんです。
この数年間で、若者も増えてきました。昔とは違って、まちに新しい風が吹いている感じがします。歩いている人の顔ぶれも変わってきた。そんな変化を楽しみながら、このまちで根を張って生きていくことに価値を感じています。


ー2024年4月、英国のストリートアーティスト、Nick Walker(ニック・ウォーカー)さんが此花で作品を制作されましたね。克美さんが壁の提供をくださいました。そのときのエピソードを聞かせてください。
克美さん: ニック・ウォーカーが来ることになって、すごくワクワクしましたね。そのときに初めて会話を交わしました。壁の下地を塗る作業をWALL SHAREメンバーの久永さんと一緒にやったんですが、なんと彼、僕の高校の後輩だったんです! 30~40年ぶりの再会みたいな感じで、「おお、久しぶり!」という雰囲気になりました。



壁の塗装作業は得意だったので、一緒に進めていくうちに、どんどん面白くなっていきました。制作が終わった後にはアーティストさんとも打ち上げをして、酒を酌み交わしながらアートやまちづくりについて語りました。共に酒を飲めるような機会は刺激的でしたね。また次のプロジェクトでも、何か力になれたらいいなと思っています。


ーミューラル(壁画)についてどのように思われていますか?
克美さん: 僕自身、音楽をやっているからかもしれないけど、アートのエネルギーに共感するんです。何が生まれるかわからない、だからこそ面白い。そういうチャレンジを続けることが、アートの本質だと思います。
ミューラルは今世界中で盛り上がりを見せていますよね。4〜5年前くらいから特に注目されるようになって、バンクシーが評価されていたりしますし、美術品オークションハウス「クリスティーズ」でもオークションで高値がつく作品もあるそうですね。スプレー缶だけでこれだけの表現ができるのはすごいこと。まるで時代の波に乗るように、ミューラルが世界をつなぐ役割を果たしているのが面白いです。

背筋を伸ばして歩けるまちっていいですよね。
ーアートの力についてどう感じますか?
克美さん: アートには、若者のエネルギーを外に向けて発信させる力があります。そして、それを見た人が反応を示す。この双方向のやり取りが重要だと思っています。
2023年から此花でミューラルタウンコノハナの活動が始まって、今、少しずつ受け入れられてきています。「此花」というワードが広がりつつあるのを感じますし、壁主が増えてくれたら嬉しいですね。個人的にも周囲に声がけしてますよ(笑)。まちのあちこちにアートが点在することで、まちの雰囲気自体が変わってくる。人々が楽しんで、にっこりできる。それがアートの力だと思います。

ー此花の未来について、どのような夢をお持ちですか?
克美さん: 日本全体で見れば、大阪や東京が中心ですが、その中で此花という場所に特徴を持たせられたらいいですね。特別な観光地ではないかもしれないけど、アートを通じて注目されるまちになれたら面白い。
たとえば、学校の通学路にアニメの壁画があったら楽しいでしょう?街角のいたるところにアートがあれば、それがまちのアイデンティティになるんです。古い建物やボロい家も、アートが施されることで価値が生まれる。そんな風に、ミューラルはまちが形作るきっかけになるんじゃないかと期待しています。
僕はこのまちが気に入って暮らしているんですよね。だから次の世代の若者が「俺のまち、いいやろ?」と誇れる場所になってくれたら嬉しい。ミューラルがいいのは視線より高いところにあるところ。見つけるために、背筋がピッと伸びる(笑)。スマホを見ながらうつむき加減に歩くのではなくて、上を見ながら背筋を伸ばして歩けるまちって、なんかいいじゃないですか。
(参照データ) FUJIFILM instax™ presents MURAL TOWN KONOHANA 大阪の此花区を舞台にした国際的なミューラル(壁画)プロジェクトのプロジェクト