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ミューラル(壁画)に関わる人を紹介するメディア「ミューラリズム」

【クライアントさんに聞いてみた#09】伝統と現代が交差する、ホテルのエントランスに宿る一枚。「アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば」が描いたブランドの物語。

  • 6月29日
  • 読了時間: 9分

更新日:6月30日



「あのリーガロイヤルホテルに、壁画?」。大阪・なんば新世界エリアに2026年4月3日オープンした、「ANCHORED by RIHGA Osaka Namba(アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば)」。リーガロイヤルホテルズが手がける新ブランド第1号店の正面玄関では、アーティスト・BAKIBAKI氏が描いたミューラルが迎え入れます。葛飾北斎の鳳凰図屏風をモチーフにBAKI柄で再解釈した作品は、「伝統を新しく」というホテルのブランド精神を体現しているかのよう。


今回はホテルの開業まで約2年間、準備室長としてプロジェクトを牽引してきた株式会社ロイヤルホテル アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば 総支配人の宮脇健輔さんに、プロジェクトの背景から完成までの舞台裏を伺いました。


「錨を下ろす」ブランドと、まちのエッセンスを重ねる


——まず、「ANCHORED by RIHGA」というブランドのコンセプトについて教えていただけますか?


宮脇健輔さん(以下、宮脇さん):   「アンカード(Anchored)」というのは、錨を下ろすというところから由来しています。ホテルが位置する地元に根ざした、そのエッセンスを色濃く表現するブランドです。リーガロイヤルホテルという90年以上の歴史を持つクラシカルなホテルの新ブランドとして、海外の方や若い方に訴求できるカジュアルなホテルという立ち位置でもあります。


新しいことはしていきたいけれど、根っこの部分は伝統的なもの。昨今ライフスタイルホテルと呼ばれるようなものが外資系中心にたくさん生まれていますが、そこに追随するだけでは当社の強みが活かせない。伝統的なものを現代風に昇華しているアーティストの方を選定のキーにしたのも、そういう考えからです。





——リーガらしさをカジュアルな形で、ということですね。まちのエッセンスをホテルに取り込もうという発想は、どんな流れで生まれたんですか?


宮脇さん:   このホテルはなんば・新世界エリアにできる、ということで、まちのエッセンスとは何だろうとまちを見渡してみたときに、すごく楽しいまちだな、と。歩いているだけで目に映る壁であったり、看板であったり、賑やかなものがたくさんある。単純な言い方にはなるんですが、そういうものをホテルの中でも表現できないかな、というのが最初のスタートでした。


私自身も約2年間、準備室長としてホテルが立ち上がる前のデザインの段階からずっと携わってきたので、あーでもない、こうでもないと考え続けてきましたね。





——アーティストの選定では、どんな基準で絞り込んでいったんでしょうか?


宮脇さん:   地域に根ざすブランドということで、最初はやはり大阪出身の方で探しました。ただそれだと範囲が狭まってしまうので、少し広げて関西の方、ゆかりのある方という選び方にしました。何かしらこの地域と繋がりのある方、そして伝統的なものを現代風にアレンジされる方。その2点が共通した選定の軸です。


今回参加していただいたのは5名のアーティストの方で、BAKIBAKIさんのエントランスミューラルのほか、レストランのはらわた ちゅん子さん、客室の木村 英輝さんと與座 巧さん、大浴場の鈴木 ひょっとこさん。さらに周辺観光マップを手がけてくださったイヌイマサノリさんという絵本作家さんもいて、合わせると6名の方に携わっていただきました。



——カラフルな面々ですね!


宮脇さん:   そうですね。皆さんそれぞれ個性がある方ばかりでした。











「イカついな」から「かっこいいやん」へ。アーティスト・BAKIBAKIとの共創


——BAKIBAKIさんとの出会いはどんな経緯だったのですか?


宮脇さん:   BAKIBAKIさんとは、WALL SHAREからの紹介を通して知りました。何名かご提案いただいた中から選定させていただきました。ご紹介いただいてから調べたら、「あ、あれもそうなんだ!」と。BAKI柄というのはやはり印象的で、記憶に残るんですよね。私は今、西淀川の方に住んでいるので十三もよく通っていて、「あれがBAKIBAKIさんの絵だったのか!」と気づくことも多いです。



——たしかに、知るとまちの見え方が変わりますよね。WALL SHAREとのつながりはどこから生まれたんですか?


宮脇さん:   別の会社様からのご紹介で、最初は別のプロジェクトでお話を伺っていたんです。そのプロジェクトは残念ながら実現しなかったんですが、チームの中で「そういえばWALL SHAREさんといういい会社があるぞ」という話が出て、一度お話を伺ってみた、という流れですね。縁というか。





——デザインのイメージはどのように擦り合わせていったんでしょう?


宮脇さん:   数回打ち合わせをさせていただいて、BAKIBAKIさんに実際に現地にも来ていただいて。大阪にゆかりのあるモチーフとして、銀杏だったり、昔のものをアレンジしてという話をしていた中で、葛飾北斎の鳳凰の屏風をベースにご提案いただきました。


最初にデジタルのパースでご提案いただいたとき、正直「結構イカついな」という印象でした。正面玄関にインパクトが欲しいとは思っていたんですが、思ったより迫力のある提案で、社内でも賛否がありましたね。


——やりすぎちゃうか、という声も出たんですか?


宮脇さん:   ある程度は。ただ最終的には、どうせやるならこれくらいインパクトがある方がいいんじゃないかということで落ち着きまして。色味の細かい調整などをしながら事前に擦り合わせていきました。


——実現するまでに一番大変だったことはなんでしたか?


宮脇さん:   消防の問題が一番苦労しましたね。新築の消防検査があって、壁に直接描いてしまうと使用できる塗料が防火塗料に限られると言われてしまいました。最初はBAKIBAKIさんに無理をお願いしてその方向で検討したんですが、スプレーが使えないなど表現の幅がかなり狭まってしまうということで。結局、直接壁ではなく、特注のキャンバスを用意してそちらに描いていただく折衷案になりました。





そのキャンバスも、長野県で作った特注サイズのものを運んできてもらって。どういう台座にするかとか、そこが決まるまでは結構ハラハラして、かなりギリギリまでどうなるか分からない状況で。BAKIBAKIさんにもご心配をおかけしたと思います。


——それは宮脇さんも完成するまでドキドキでしたね(笑)。実際に完成した作品を見たときはいかがでしたか?



宮脇さん:   もう、めちゃめちゃかっこよくなってるやん、と。デジタルのパースとは全然違って、いい意味で品が出ていて。反対していた人たちもすごく大絶賛で。インパクトがあるだけじゃなく、落ち着きというか、風合いというか、さすがだな、という一言に尽きます。


——実際にお客様の反応はいかがですか?さっき、海外の子どもが壁の前でポーズを取って写真を撮ったりという場面をみました。


宮脇さん:   記念写真を撮っていただく姿がよく見られますね。お客様の思い出になって、それが広がって、こんなホテルがあるんだというのが世界に伝わっていけば、本当にいいことだなと思います。狙い通りというか。





ゴチャゴチャ感の中に根ざす伝統。大阪というまちの魅力


——宮脇さんは大阪のご出身とのことですが、このプロジェクトを通して大阪というまちを改めて見つめ直した部分はありましたか?


宮脇さん:   ゴチャゴチャ感が魅力なのかなっていうのはとても思っていて。大阪生まれ大阪育ちで、改めて大阪のことを考える機会ってあまりなかったんですけど、このプロジェクトに入ったことで、色んな歴史のことも見直す機会をいただけました。


——大阪に長く住んでいると、かえって気づきにくいこともありますよね。


宮脇さん:   そうなんです。なんばでは劇場文化が古くからあって、お笑いがあり、文楽劇場があり、歌舞伎座があり。意外とゴチャゴチャな中に伝統的なものが根付いて発展しているまちなんだなと思いましたね。オタロードも電気街から発展して、日本の新しい文化の発信地になっていますし。




——確かに、上方落語もあるし、文楽もある。そして今はオタロードという新しい文化も。


宮脇さん:   まさにそうですね。このホテルの場所も、北に行けばなんばやオタロード、黒門市場が徒歩圏内、南に行けば新世界・天王寺があって、東に行くと四天王寺さんや天王寺七坂があって、西に行くと木津市場という本物の市場もある。どの方向に行っても何かしら面白いものがあるまちの真ん中で、どうやって溶け込みながらリーガらしさを出すのか、ということはずっと課題として考えてきました。


まちに溶け込みながらも異空間を感じていただける、非日常と日常のバランス、やはりそこに尽きますね。



このホテルの成功が、ブランドの物語になる。今後の展望


——オープンして約2ヶ月が経ちますが(取材時)、率直な感想を聞かせてもらえますか?


宮脇さん:   ホッとしたのは一瞬で、まだ落ち着かないところはあるんですが(笑)。一番うれしかったのは、お越しになられた皆さんに「良いホテルだね」と言っていただけること。2年間プロジェクトに携わると視野が狭くなってくるので、第三者であるゲストの方や外部の方の目線でどう見えるのか、ずっと気になっていたんです。「なんやこれ」って言われるかなと正直ちょっと思っていたところがあったのですが、蓋を開けて見るとそういう声がなくて本当に安心しました。


——ホテル全体としてのバランスがうまくいったということでしょうか。今後の展望はどんなふうに描いていますか?


宮脇さん:   「アンカード・バイ・リーガ」というブランドは今回が1号店で、次の計画はまだ決まっていません。このホテルの成功にかかっているのかなと勝手に思っていて。ここがうまくいけばブランド力ができあがって、今後出店するとなったときにブランドが広がっていければ、それがこのホテルの成功なのかなと。


この1発目にミューラルができたことで、どこかブランドとしてのストーリーにもなっていくんじゃないかな、と個人的には思っています。例えば土地土地に合わせた作家さんの作品が全国に広がっていければ、面白そうだなとか。まあ、これはあくまで個人的な思いです。











——その土地ごとの魅力がアートを通して表現できる空間って、素敵だと思いました。最後に、このプロジェクトを通じて宮脇さん自身に変化はありましたか?


宮脇さん:   アートや色使い、それからまちをよく見るようになりました。看板一つとっても、この店はこんな風になってるんだ、と。あえて美術館に行くというよりも、まちに題材があふれているんだなと思うようになりましたね。


——「まちに題材がある」、すごくいい言葉ですね。


宮脇さん:   まちに溶け込みながらも異空間を感じていただける、非日常と日常のバランス。それが結局、このホテルが追いかけていきたいものなんですよね。





取材・執筆:MURALITHM編集部(小倉ちあき)



プロジェクト概要:

アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば エントランスミューラル


アーティスト:BAKIBAKI

場所:アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば(大阪市浪速区)正面玄関

オープン:2026年4月3日



MURALITHM編集部: オウンドメディア「MURALITHM(ミューラリズム)」は、WALL SHARE株式会社のメンバーが自ら取材・制作を行う公式メディアです。ミューラルにまつわるプロジェクトの舞台裏を、現場の熱量そのままに言語化。完成したミューラルの美しさだけでなく、アーティストの思考プロセスや社会とアートが交差する瞬間の記録をお届けしています。




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